ネット法律家のあまぎです。 皆さんは生活保護に対してどのようなイメージがありますか? 国の調査によると平成30年の段階で生活保護受給者は200万人を超えたそうです。 これは日本人の約50人に1人が生活保護を受給しているという計算になります。 思っていたよりも多く感じる数字ではないでしょうか? しかし生活保護を利用できる資格のある人のうち現に利用している人の割合は1.6%と少なく、 実際には受給資格があるにもかかわらず受給してない人がほとんどです。 [参考:日本弁護士連合会より] 長引くコロナ感染や天災など突然予想していない事が起こるものです、 生活保護は恥ずかしいことでも、隠さなければいけないことでもありません。 もしも生活に困窮し食事も満足に出来ないような場合であれば迷わずに利用すべきです。 ただ、何も知らずに申請しようとすると門前払いされてしまう事があるので、 今回は「断られない為にも知っておきたい、生活保護の申請から受給までの流れ」を詳しく解説します。
受給までの流れ
まずは受給されるまでの大まかな流れをみてみましょう。
①役所の福祉事務所(生活保護担当窓口)にいく

②生活保護申請書を提出する

③調査が行われる

④結果が通知される
受給できる条件
受給できる条件です。原則①~⑤に該当する必要があります。
①収入が最低生活費(*)を下回っている
②売却可能な資産がない
③援助してくれる親族がいない
④病気などの理由で働けない
⑤生活保護以外の公的支援が受けられない(受けても足りない)
*最低生活費とは「生活扶助」と「住宅扶助」の合計金額で計算されます。
例えば、生活扶助が70,000円で住宅扶助が60,00円とされている場合は、7万+6万の合計13万円が最低生活費となり、
13万円を下回っている場合に最低生活費を下回っているといえます。
調査の内容
「受給の条件」の①~⑤に本当に該当しているかを調査します。
①生活状況把握のための実地調査
収入が最低生活費を下回っているか
②預貯金、不動産などの資産調査
売却可能な資産がないか
③親族による援助の調査
援助してくれる親族がいないか
④就労の可能性についての調査
働くことができないか
⑤公的制度や収入状況の調査
生活保護以外の公的支援が受けられない(受けても足りない)か

①~⑤の具体的な調査内容は以下のような感じです。
① 生活状況把握のための実地調査
福祉事務所の職員が申請者の自宅を訪問し売却できる資産の調査を行います。
警察による家宅捜索とは違うので引き出しや押入れを開けて書類を調べたりはしません。
② 預貯金、不動産などの資産調査
預貯金、生命保険、土地家屋、自動車、高価な貴金属など売却可能な資産がある場合、
その資産を売却して生活費に充てられます。
③ 親族による援助(仕送りなど)の調査
二親等以内の親族(親・子・兄弟姉妹・祖父母・孫)に対して援助(仕送りなど)が出来るかどうかを問う手紙を郵送します。親族が援助できない場合は証拠書類を求めらる事がありますが、協力は任意なので断った事で罰則があったり保護を受けられなくなるような一切事はありません。
*申請時に「扶養が期待できる状態にない」ことを説明すれば照会を止めることもできます。https://tsukuroi.tokyo/2021/04/20/1551/
④ 就労の可能性についての調査
働ける能力があるかどうか聞き取り調査が行われます。
⑤ 公的制度や収入状況の調査
生活保護以外の公的制度の利用可否が検討されます。
生活保護以外の制度で生活できるような場合はそちらが優先されることになります。
申請の際に必要なもの
お住まいの地域を管轄している「福祉事務所」が申請先になります。
*住所がない場合は最寄りの福祉事務所(住所がなくても申請できます)
① 生活保護の申請書・申告書
福祉事務所に用意されています。下記のURLからダウンロードする事もできます。
https://www.npomoyai.or.jp/wp-content/uploads/2015/04/seihoshinseiset.pdf
②本人確認書類
健康保険証、マイナンバーカード(または通知カード)など
③資産申告書
記帳済みの通帳、生命保険の保険証券、など
④収入がある場合
給与明細書年金手帳、年金証書、など
申請後の流れ
① 審査期間は原則14日以内、最長30日以内
②結果の通知は郵送か電話
③ 却下されて理由に納得できない場合は不服申し立てすることが可能
生活保護の種類
「生活扶助」「医療扶助」「介護扶助」「生業扶助」「住宅扶助」、
「教育扶助」「出産扶助」「葬祭扶助」の8つあり状況に応じてどれかが支給されます。
① 生活扶助
生活費にかかる食費、水道光熱費、被服費など
②医療扶助
病院の診察、治療、手術や薬代の費用、通院するための交通費など
③介護扶助
介護サービスの費用(福祉用具・住宅の改修・施設介護費)など
④生業扶助
生活困窮世帯の収入増加や自立費用、就職するための技能を習得する費用、
就職支度費用、子どもの進学授業料など
⑤住宅扶助
家賃、敷金、住宅維持費(修繕費)、更新料、保険料、引っ越し費用など
⑥教育扶助
子どもの義務教育にかかる費用(通学費、給食費、教科書代)など
⑦出産扶助
出産にかかる費用(分娩前後の処置・ガーゼや衛生材料用品)など
⑧葬祭扶助
お葬式、火葬、埋葬の費用など
よくある質問
生活保護に関する質問はTwitterやお問合せからも受け付けています。

生活保護をうけたいのに断られました。

生活保護の相談ではなく「生活保護の申請をしにきたと」伝えてください。
窓口にいくと相談からはじめられて申請できずに終わる事があります。

外国籍ですが日本の生活保護をうけられますか?

「永住者」や「定住者」、「日本人の配偶者がいる方」等であればうけれます。。

家族に知られたくないので扶養照会されたくありません。

以下の事情等がある場合は扶養照会を行わなくてよいとされています。
① DVや虐待のある場合
② 一定期間(十年程度)音信不通が続いている
③ 親族から借金を重ねている
④ 相続をめぐり対立している

働ける人は申請できないと断られました。

働ける場合でも収入が少ない場合や仕事が見つからなくて
生活に困っている場合は申請できます。

心身に疾病を持っていますが診断書等の書類がありません。
生活保護は受けられますか。

診断書等の有無は要件ではないので必要ありません。
ただし申請をする時に役所の指定した病院で検診を受けることになります。

借金があっても生活保護を受けれますか?

借金があっても生活保護の申請はできます。
困窮してる証明としても有効なので全く問題ありません。
ただし生活保護の申請日以降に借金をした場合は
生活保護費が減額されるので注意が必要です。

生活保護費で借金を返済しても良いですか?

借金の返済につかうことは可能ですが借金の返済にあてた場合、
生活費が足りなくなってしまう恐れがありますので、
自己破産をするという選択肢も考えてみてもよいかもしれません。
生活保護受給者であれば法テラスを利用すれば実質無料で自己破産できます。

現金や預金が手元にあるとダメですか?

現金と預金の合計金額が最低生活費以下であれば問題ありません。
ただし、申請日の時点で所持金が最低生活費の半額を超えている分については、
初回の保護費から差し引かれることになります。

持ち家に住み続ける事はできないの?

ローンがなく住んでいる場合はそのまま住むことができます。
資産価値が高いものは売却を勧められる場合もありますが、
基準を超えなければ大丈夫です。

今住んでいる家の家賃が高いので引っ越せと言われました。
今の家に住み続ける事はできないの?

家賃が高くても住み続けることはできます。
家賃が高いという理由で生活保護が受けれないわけではありません。
ただし、住宅扶助費(家賃の支給額)には上限があるので、
家賃が高ければその分節約した生活が必要になります。

子供のバイト代は申親しなくても大丈夫ですか?

アルバイトで稼いだ場合は申告しなければなりません。
稼いだ額の全てが申告対象になるわけではありません、
ただしケースワーカーに相談をしてください。

年金収入が最低生活費よりも多いですが
介護費や医療費が多額にかかる場合は受給できますか?

考慮されますが申請がとおるかは微妙なラインになります。
ですがまずは申請をしてみることをおすすめします。

生活保護が途中で打ち切られる事ってあるの?

以下の条件に該当する場合、打ち切られる事があります。
① 受給者が失踪した
② 収入が増加し生活保護の必要なくなった
③ 受給者本人が保護を辞退した
④ ケースワーカーの指導指示に違反した

生活保護の受給中に引っ越しをしたけど近所の騒音がひどくて困っています、
今の部屋から引っ越すことはできますか?

やむを得ない事情がある場合は、引っ越し代やそれに伴い発生する
敷金などの費用を別途申請する事が出来ます。

ケースワーカーの指導や指示には必ず従わないといけないの?

どのような指導や指示にも従わなければならないというわけではありません。
(生活保護法27条より)
・指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
・被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
生活保護受給者が車を所持できる条件です。
— あまぎ|ネットの法律家さん (@amagi_houmujimu) May 28, 2022
(①~⑤のどれかひとつに該当)
①身体に障害があり通院に必要
②就労のために必要
③最低限の生活を送るために必要
④車がないと仕事ができない
⑤半年後までに生活保護を受給しなくなる見込みhttps://t.co/xomlTl2zqr
法律の条文
日本国憲法 25条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000144
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない
生活保護法 1条
(この法律の目的)
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
生活保護法 25条
(指導及び指示)
第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
コメント