こんにちは、行政書士ライターのあまぎです。
生活保護について、皆さんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「本当は苦しくて生活保護を受けたいけど、難しくて無理なんじゃないか...」
「生活保護を受けることに罪悪感がある。」
このようなイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
厚生労働省の実施した「生活保護の被保護者調査」によると、平成30年時点で生活保護受給者は200万人を超え、日本人の約50人に1人が生活保護を受給しているということがわかりました。
50人に1人と聞くと意外と多くて驚かれる方も多いかもしれません。
しかし、実際には生活保護を利用できる資格のある人のうち、実際に利用している人の割合はわずか1.6%に過ぎません。
生活保護は憲法で保障された権利であり、恥ずかしいことでも隠すべきことでもありません。
必要なときには積極的に利用すべき制度です。
しかし、何も知らずに申請すると、本当に困っているにもかかわらず申請窓口で断られてしまうこともあるのが現状です。
本記事では、断られないための生活保護の申請から受給までの流れを詳しく解説します。
受給までの大まかな流れ
一般的な受給までの大まかな流れは以下の通りです。
①「福祉事務所」にいく
まずはお住まいの地域の福祉事務所を訪問し、生活保護の相談を行います。事前に電話で予約をしておくとスムーズです。
②申請書類を提出する
必要な書類を準備し、福祉事務所に提出します。申請書、収入証明書、資産状況を示す書類などが求められることが一般的です。
③調査が行われる
福祉事務所の職員が申請内容を確認し、必要に応じて家庭訪問や面接を通じて生活状況を調査します。この調査は通常、数週間かかることがあります。
④結果が通知される
調査終了後、生活保護の受給が認められるかどうかの結果が通知されます。結果は通常、書面で通知されますが、電話での連絡がある場合もあります。
受給できる人の条件
一般的な受給までの大まかな流れは以下の通りです。
原則として、以下の①~⑤の全てに該当する必要があります。ただし、一部例外もありますので、詳しくは後述の「調査の内容」で説明します。
①収入が最低生活費を下回っている
申請者の世帯収入が、国が定める最低生活費を下回っていることが必要です。最低生活費は、世帯の人数や地域によって異なります。
②売却可能な資産がない
現金化できる資産(不動産、車、貴金属など)を持っていないことが条件です。資産がある場合は、まずそれを生活費に充てる必要があります。
③援助してくれる親族がいない
親族からの経済的援助が期待できないことが必要です。援助の可能性がある場合、まずは親族に相談することが求められます。
④病気などの理由で働けない
健康状態や年齢などの理由で就労が困難であることが条件です。医師の診断書や障害者手帳などが求められる場合があります。
⑤生活保護以外の公的支援が受けられない(受けても足りない)
失業保険や児童手当など、他の公的支援を受けても最低生活費に満たない場合に限り、生活保護を受給できます。
調査の内容
生活保護の受給条件に関する調査では、申請者の収入が最低生活費を下回るかの実地調査、預貯金や不動産などの資産が生活費に充てられるかの資産調査、親族からの援助可能性の確認、就労の可能性調査、他の公的支援制度の利用状況確認が行われ、これらを総合的に判断して受給の可否が決定されます。
①生活状況把握のための実地調査
この調査では、申請者の収入が最低生活費を下回っているかどうかを確認します。具体的には、世帯の収入源(給与、年金、手当など)を調べ、最低生活費と比較します。最低生活費は、世帯の人数や年齢構成に基づいて定められた基準額です
②預貯金、不動産などの資産調査
申請者が所有する預貯金や不動産、生命保険、有価証券などの資産が売却可能かどうかを調査します。これらの資産が生活費に充てられるかどうかが判断されます。ただし、住居用の不動産や特定の個別事情により、保有が認められる場合もあります
③親族による援助の調査
申請者に援助を提供できる親族がいるかどうかを確認します。具体的には、両親、兄弟姉妹、子どもなどの扶養義務者からの援助の可能性を調査します。ただし、親族との関係が著しく悪化している場合や、DVなどの事情がある場合には、扶養照会を行わないこともあります
④就労の可能性についての調査
申請者が病気などの理由で働けないかどうかを確認します。働くことができる場合は、その能力に応じて収入を得る努力が求められますが、病気や障害がある場合は医師の意見を参考にし、療養に専念することが求められます
⑤公的制度や収入状況の調査
生活保護以外に利用可能な公的支援制度(年金、雇用保険、児童手当など)があるかどうかを確認します。これらの制度を活用しても生活を維持できない場合に、生活保護の対象となります
申請の際に必要なもの
お住まいの地域を管轄している「福祉事務所」が申請先になります。お住まいの地域を管轄している「福祉事務所」が申請先になります。住所がない場合は最寄りの福祉事務所(住所がなくても申請できます)
① 生活保護の申請書・申告書
福祉事務所に用意されています。下記のURLからダウンロードする事もできます。
https://www.npomoyai.or.jp/wp-content/uploads/2015/04/seihoshinseiset.pdf
②本人確認書類
健康保険証、マイナンバーカード(または通知カード)など
③資産申告書
記帳済みの通帳、生命保険の保険証券、など
④収入がある場合
給与明細書年金手帳、年金証書、など
申請後の流れ
生活保護申請後は、申請者の収入が最低生活費を下回っているかの実地調査、預貯金や不動産などの資産調査、親族からの援助可能性の確認、就労の可能性調査、他の公的支援制度の利用状況確認が行われ、これらを総合的に判断して生活保護の必要性が決定されます。
① 審査期間は原則14日以内、最長30日以内
申請が受理されてから、通常は14日以内に審査が行われます。ただし、特別な事情がある場合は最長で30日かかることがあります。審査期間中は、福祉事務所からの連絡を待ちましょう。
②結果の通知は郵送か電話
審査結果は、通常郵送で通知されますが、急を要する場合や特別な事情がある場合には電話で連絡が来ることもあります。通知が届いたら、内容をよく確認してください。
③ 却下されて理由に納得できない場合は不服申し立てすることが可能
申請が却下された場合、その理由に納得できないときは、不服申し立てを行うことができます。不服申し立ては、通知を受け取ってから60日以内に行う必要があります。具体的な手続きについては、福祉事務所に相談してください。
よくある質問
生活保護をうけたいのに断られました。
生活保護の「相談」ではなく「申請」しにきたとはっきりと伝えてましょう。
申請をしてきているのにも関わらず申請を受付ないのは申請権の侵害であり法律違法です。
一人だと不安な場合は法律家などに相談してみて下さい。
働ける人は申請できないと断られました。
働ける場合でも収入が少ない場合や仕事が見つからなくて
生活に困っている場合は申請できます。
家族と関係が悪いので扶養照会されたくありません。
以下の事情等がある場合は扶養照会を行わなくてよいとされています。
① DVや虐待のある場合
② 一定期間(十年程度)音信不通が続いている
③ 親族から借金を重ねている
④ 相続をめぐり対立している
生活保護が途中で打ち切られる事ってあるの?
以下の条件に該当する場合、打ち切られる事があります。
① 受給者が失踪した
② 収入が増加し生活保護の必要なくなった
③ 受給者本人が保護を辞退した
④ ケースワーカーの指導指示に違反した
ケースワーカーの指導や指示には必ず従わないといけないの?
どのような指導や指示にも従わなければならないというわけではありません。
(生活保護法27条より)
・指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
・被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
持ち家に住み続ける事はできないの?
ローンがなく住んでいる場合はそのまま住むことができます。
資産価値が高いものは売却を勧められる場合もありますが基準を超えなければ大丈夫です。
生活保護申請に関するよくある誤解
(1)必要な書類が揃っていなくても、生活保護の申請は可能です。
生活保護の申請時には、すべての書類が揃っていない場合でも申請を行うことができます。申請後に不足している書類を提出することが求められますが、まずは福祉事務所に相談し、どの書類が必要か確認してください。
(2)住む場所がない方でも申請できます。
まずは、現在いる場所に近い福祉事務所にご相談ください。住居がない場合でも、適切な支援を受けるために早めの相談が重要です。
(3)施設に入ることが申請の条件になることはありません。
扶養義務者による扶養は生活保護に優先されますが、同居していない親族に相談してからでないと申請できないということはありません。
(4)持ち家がある方でも申請できます。
利用可能な資産を活用することは生活保護の要件ですが、居住用の持ち家については保有が認められる場合があります。まずはご相談ください。
(5)資産の活用が求められることがありますが、例外もあります。
自動車は通常処分が必要ですが、通勤用の自動車を持ちながら求職中の場合、処分せずに保護を受けられることがあります。自営業で必要な店舗や器具も、処分せずに保護を受けられる場合があります。
出典 厚生労働省 生活保護を申請したい方へ
生活保護に関連する法律
日本国憲法 25条
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000144
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
② 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない
生活保護法 1条
(この法律の目的)
この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。
生活保護法 25条
(指導及び指示)
第二十七条 保護の実施機関は、被保護者に対して、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導又は指示をすることができる。
2 前項の指導又は指示は、被保護者の自由を尊重し、必要の最少限度に止めなければならない。
3 第一項の規定は、被保護者の意に反して、指導又は指示を強制し得るものと解釈してはならない。
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